ギンイロノナミダ - Essay

Essay

49.THE END OF THE WORLD

ほんのちょっと 出会うタイミングが悪かっただけ。

お互いに電話番号を知っているのに、会う約束をするのはメールで。お互いの住んでるところは知っているのに、会う場所はいつも人込みの中で。君とこうして会うようになって半年が過ぎた。最初の出会いは共通の友人を通じての食事の席。お互いに電話番号交換するだけで終わったその翌週、君から突然の電話。

それから何度か一緒に食事をして、お酒を飲んで、話をしたりしたけど、いつも二人で会うときは雨の日で、「日頃の行いが悪いからだね」って笑ったけど、なんとなく気持ちのどこかでそのことを笑えずにいた。

お互いのことを知らない街で、傘に隠れるように、手をしっかりと繋いで歩く僕らは他の誰から見ても普通の恋人のように見えるだろうけど、それでもぎこちない恋はそれ以上のものを求めようとはしなかった。

怖かったんだ。

君ともう少し早く出会えたら、陽の光の下を君と歩くことが出来ただろう。全ては仮定形での話になってしまい、帰り際に「またね」さえも言えないままに。

それでも

たとえ誰にも祝福されなくとも、これを愛と呼ぶことが許されるのなら、今、このときだけ、君を僕のものにしたい。君が同じ気持ちでいることも分かっていた。足りない何かを埋めあうように、その夜僕らはひとつになった。

君の顔さえもはっきりと見えない薄暗い部屋の中、見た目より細い君の身体を抱きしめたとき、君が耳元でそっと「好きだよ」って囁いた。誰にも聞こえないようなその声は、僕らを更に哀しくさせて、僕は君にかける言葉を見つけることが出来ないまま、君を強く抱きしめた。それが今の僕に出来る精一杯の答えだった。

外に出た頃には雨も止んで、かすかな月の青い光が二人を照らす。まだ暗いうちにさよならを言うことをためらう僕。そっと君を見つめると、まるで世界が終わるかのような顔をするから、何も言えなくなってまた君を抱き寄せ唇を重ねた。

今夜も「またね」と言えないままに。

Inspired by "THE END OF THE WORLD" from Album「UNDERWEAR」/ 槇原敬之

(2002.7.8)