ギンイロノナミダ - Essay

Essay

52. 数学は 数が苦? 数楽?

小学生の頃から算数が好きでした。なぜか。答えは簡単。解答がひとつしかないから。しかも記憶力があまり必要ない。パズル的な要素を含んでいる。ある意味、要領さえ良ければ解けてしまうのだ。要領だけがいい俺には最適の学問なのだ。

まぁ、上記についてはいくらでも反論があるだろう。「解答はひとつだが解法はひとつではない」とか「公式や無理数などに記憶力が必要だ」とか「延々と続く計算ドリルのどこがパズルなんだ」等々。確かに、それらはごもっともな意見である。

掛け算九九がなかなか覚えられずに泣きながら学校に行ったこともある。それでもようやく覚えて、友人達と「何秒で掛け算九九を言い切るか」と競争したこともある。円周率に至っては「何桁まで言えるか」を競った。中学校までは小数点以下35桁までを覚えていた私がトップに君臨していたのだが、さすがに高校生ともなると凄いヤツもいるもので、50桁、70桁、終いには100桁まで覚えているバカ(いやバカじゃないが)もいて、あっさり普通の人レベルになってしまったのだが。

社会人になってからというもの、数学が必要になることはあまりない。すべて算数のレベルで解決できる。そりゃそうだ。日常生活に微分積分など必要ない。せいぜい確率程度のものだろうが、ギャンブルに無縁ならなおさら必要ない。

正直な話、公式なんかは覚える必要がないと思っている。「あの本のどこに書いてある。」ことを覚えておく、もしくはメモに書いておく。その程度でいいのだ。
俺もsin(α+β)=sinαcosβ+sinβcosαなんて覚えちゃいない。それにこのIT時代、ネットで検索すれば公式なんか一発で見つかるのである。学校の先生方には申し訳ないと思うが、計算だって電卓使えばいいことなのだ。要はそれらを使いこなせるかどうかと、どのように使うかを学べばいいのだ。

数学では「視点を変える」「物事を考えるプロセス」がすごく大事である。例えば図形などの証明問題。一筋縄ではいかない問題なども逆さから見るとあっけなく解法が見えることもある。補助線を1本引くだけで大学入試レベルの問題が中学生の中間テストレベルになることもある。また、ほとんどの問題に関してそうなのだが、一発で答えを求められる問題はナイ。センター試験の数学の問題は、プロセスまでもを考慮した作りになっている。ある答えを導き、その答えからまた別の解答を得る。宝探しのような、謎解きのようなこのプロセスを俺は「外堀を埋める」と呼んでいた。一つしかない答えに向かい一つ一つ謎を解く。このプロセスが楽しかったのである。

図1

ここで例題を用いよう。左の図は1辺がaの正方形の内側にコンパスを用いて描いた図である。
このとき、灰色の部分の面積を求めるにはどうしたらよいか。

このまま考えていてはどうしようもない。
(微分積分などを駆使すれば求められるだろうが、中学生レベルでも理解できるように解答してみたい。)
あなたは頭をひねるだろう。そして45度ひねったところで思いつくはずである。
そうだ、補助線を引いてみよう、と。

図2 図3

そこで補助線を引いたのが左の図である。
ついでに45度回転回転させたのがその右の図である。
この図形、見覚えはないだろうか?
実は私が小学校6年生のとき、チャレンジ問題として出されたことがある図形なのだ。
当時解けずに泣きそうになり、高校生になってようやく解けた。
大学のオリエンテーションでもこの問題が出され、そのときには解けなかったが。
この問題、ある種の知恵の輪なのだ。コツを知っていればなんなく解けてしまう問題なのである。

図4

さて、実際の解き方なのだが、まともに考えても埒があかない。
図形の面積を求めるときのコツというのをご存知だろうか?
「まず、まともに考える。ダメなら求める場所以外の図形を眺めてみる。」
するとどうだろう。左図の赤色部分×4で灰色部分以外の面積が求められるのだ。
すなわち、
(灰色部分)=(正方形)-(赤色部分)×4 … (1)
ということになる。まずこれで一つ外堀を埋めることができた。

図5

では、次に赤色部分の面積を求めるにはどうするか。これにも補助線を使ってみよう。

左図のように補助線を2本引いてみる。すると、
(赤色部分)=(30度の扇形)-(黄色部分) … (2)
となる。また一つ外堀が埋まった。次は黄色部分を求めよう。

(なぜ30度の扇形と分かるのかと思われる方は次の解説を読んでいただきたい。)

図6

黄色部分の面積を求めるには、60度の扇形から緑色の正三角形を引けばよい。

ここで上記の30度の扇形ともあわせて証明をしてみよう。

左図で、AB=BC、AC=BCであることは明白なので、AB=ACである。
よってAB=BC=CAとなり、三角形ABCは正三角形である。
ゆえに∠ABC=60度。
∠DBCは90度であるから、∠DBA=30度である。(証明終わり)

よってまた一つ外堀を埋めよう。
(黄色部分)=(60度の扇形)-(緑色の正三角形) … (3)

次に正三角形の面積を求めてみよう。

1辺をbとすると、高さは三平方の定理により、
√{(b2)-(b/2)2}=√(3) b/2

よって面積は
b × √(3) b/2 × 1/2 = √(3) b2/4 … (A)

60度の扇形の面積は、
πb2 × 1/6 = πb2/6 … (B)

(3)より、黄色部分の面積は、(B)-(A)より、
πb2/6 - √(3) b2/4 = {2π-3√(3)}b2/12 … (C)

続いて、30度の扇形の面積は、
πb2 × 1/12 = πb2/12 … (D)

(2)より、赤色部分の面積は、(D)-(C)より、
πb2/12 - {2π-3√(3)}b2/12 = {3√(3) - π} b2/12 … (E)

(1)より、灰色部分の面積は、
b2 - {3√(3) - π} b2/12 × 4 = {3-3√(3)+π} b2/3

ただし、b=√(2) a/2 なので、解答は
{3-3√(3)+π} a2/6 となる。

外堀をひとつひとつ埋めていき、それにより導き出される解答。あぁん、エクセレント♪

多分、数式を見た時点で「うっ… (- - ;」と思われた方もいらっしゃることだろう。「数が苦」の方々だろうと思われるが、それでも、前段までの図形としての考え方なら納得できませんか?問題は計算式がどうこうではなく、考え方と視点なのだ。どんな学問でも、社会に出ても、日常生活でもこの考え方はきっと役に立つ。学校は勉強を教えてくれるところではない。自分で学ぶところなのだ。更には「考え方を学ぶ」場所なのだ。

また算数コラムを書きます。次回は「割り切れる数」について。

(2002.8.13)