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Essay

76.定義と定理

この問題を取り上げるには力不足かも知れませんが(決して役不足ではありません)

このページには誤った文章があります。「1を奇素数個(p個)並べて作ったp桁の数は合成数である」ことの証明は誤りであり、実際、1を19個並べた数は素数であることが証明されています。(2007年6月21日追記)

幼い頃から算数(数学)が好きで、大学でも数学を専攻していたのですが、中でも一番に心を奪われた数がありまして。それが素数なのですよ。

車に乗っているときでも目の前を走っている車のナンバーを素因数分解してみたり、カレンダーの日付を素因数分解してみたり(因みに今日20041204を素因数分解すると22*29*197*877)。なぜゼミを組み合わせ論にしたのか自分で分からない。素直に整数論のゼミに行っていれば中退せずにすんだのかも知れません。

中学生の頃だったと記憶しているのですが、何かの本で「1を並べて作った数(例えば11だとか11,111だとか)で素数は11だけである。」というのを読んだことがあって、それがずっと引っかかっていました。単純化ができなかったのです。111=3*37、1,111=11*101、11,111=41*271、…と小さいほうから計算しているうちに、この命題が「1を奇素数個(p個)並べて作ったp桁の数は合成数である」という命題に帰するということに気付いたのですが、これまたどこから手をつけてよいのか分からなくなりました。1をp個並べて作った数というのは(10p+1-1)/9と表せるまでは良いのですが、それをどう加工しようかと。

そこで出会ったのがフェルマーの小定理だったのです。フェルマーの小定理とは、

p を素数とし、a を p の倍数でない整数(a と p は互いに素)とするときに、

ap-1≡1(mod p)

すなわち a を p - 1 乗したものを p で割ったあまりは 1 になるというものでした。

これを利用すれば先ほどの命題は

10p+1≡1(mod p)

10p+1-1≡0(mod p)

999…9(9をp個並べたp桁の数)≡0(mod p)

111…1(1をp個並べたp桁の数)≡0(mod p)
(両端を9で除する)

となり、あっけなく問題が解決してしまったのです。恐るべしフェルマー。

だがしかし、数学を学ぶ上で大切なことを一つ見落としていました。それは「定義」と「定理」の違いです。「定義」とは「決めたことがら」であり、「定理」とは「定義から導き出されたことがら」なのです。ですから定理は定義によって裏づけされていて、必ず証明が行えるもので、証明ができない定理はもはや定理ではなく、その定理が不完全であるか、もしくは知らないだけで定義であるのかも知れないのです。先ほどフェルマーの小定理をさも定義であるかのように利用し、それにより自分の命題を解決したのですが、実際はフェルマーの小定理が正しいことを証明しなければこの命題解決は不完全なのです。もちろん学校のテストなどでいちいち定理の証明などやっていたら時間がいくらあっても足りません。解答は完璧なものになるでしょうけど。

定義は数えるほどにしかありません。その数少ない定義から先人達は様々な定理を生み出したのです。先ほどのフェルマー然り三平方の定理のピタゴラス然り。恩恵に肖ると同時に尊敬の念を忘れてはいけないと思うのです。自分に定理を証明する力がないことを棚に上げて言いますが、数学だけでなく他の学問でも同じだと思うことは「なぜ?」という疑問だと思うのです。「この定理が正しいって本当なの?」と思えばしめたものです。その疑問はあなたを新しい学問の世界へ誘う扉なのです。その扉を開けて進むことはときには困難なこともあるでしょうし、逃げ出したくなることもあるでしょう。ですがその世界を散策することはあなたの人生を豊かにすると共に、また新しい世界へと誘ってくれることでしょう。学ぶとはそういうことだと学生を離れて10年経った今思うのです。

最後はなんだか抽象論になってしまいました。

(2004.12.4)