ギンイロノナミダ - Essay

Essay

79.沖縄一泊二日の旅(前編)

2005年9月26日夜8時。思えば俺の旅はここから始まっていたに違いない。明日からの沖縄旅行を目前に控え、旅支度は1ミリも進んでいなかった。リゾートホテルに泊まるのだからアメニティ関係は全く要らないし、部屋着やバスローブもあるに違いない。最低でも浴衣はあるだろうし、なかったとしてもシーツに包まれば寝ることができる。かのマリリン・モンローだって寝るときはシャネルNo.5だけで寝ていたのだ。人間生まれてくるときは誰しも裸なのである。沖縄の自然を満喫するためなら2日間裸で過ごすことも厭わない!と思っていたのですがそれは社会的に許されないだろうということで、荷物は極力減らし、開いたスペースには沖縄での想い出を詰めようと(主に星の砂)鞄を探しに近所のショッピングセンターに出かけたのですが、大きさと値段が折り合わず、さんざん悩んだ末別の店へ。しかしその店では機能性に難のあるものばかりだったので、快適な旅のためには多少の犠牲も止むを得んと最初の店へ戻り、鞄を購入。うん、他に旅行の予定なんてないんだけどな。

そもそもこの旅行は1月に職場のビンゴ大会で旅行券が当たったときから計画しておりまして、突然の夏休み返上連勤をも乗り越えてようやく実現した沖縄旅行なのですよ。計画だけで実現しないなんて小学生の夏休み計画表じゃあるまいし。とにかく是が非でも沖縄だ!ということで無理矢理休みを毟り取り(課長、係長、ありがとうございました)1泊2日沖縄旅行と相成ったのです。

9月27日AM7:30。快晴。どんだけ日頃の行いがいいんだ俺は、なんて自分で自分を褒めつつ(誰も褒めてくれないから)車を福岡空港へと走らせる。空港まで20分もあれば着けちゃうよ、平日だし空港に向かう車なんてほとんどいないだろうしね、なんて安易に考えていたらまさかの大渋滞。そりゃそうだ、普通ならちょうど出勤時間、ラッシュアワーなマジカルサウンドシャワー。そしてミュージックアワー(ポルノグラフティ)。さっきまで己を褒めていた晴々とした気持ちはどこへやら。自分で自分を呪い殺そうかと。いや、目の前の車10台分を呪い殺そうかと…いやいや、十分間に合ったんですけどね。

JALの自動無人チェックインマシン「むじんくん」にて飛行機へのチェックインを済ませ(そんな機械はありません)、搭乗案内があるまで朝食タイム。見渡せば南の島でイヤンバカンなバカンスを楽しむのではと推測される女子大生4人組や、スーツ姿の男性とラフな格好の女性の見た目の年齢差にドキドキしたり、かと思えば未踏の大地を踏みしめるかのごとき勢いで緊張しまくっている小学生や、って平日なのになんで小学生がいるのかと。まぁね、やっぱりモノより思い出だよね。男もモノより思い出だよね。泣いてない。

いつものコトながら緊張する手荷物検査を何食わぬ顔でクリアする。あの金属探知機ってどんな金属に反応するのですかね。シルバーとプラチナには反応しなかったようです。つまりシルバーかプラチナのナイフを持ち込めばハイジャックができると思います。Louis VuittonやCHANELでプラチナのサバイバルナイフとか作ってそうですがどうなんでしょうか(作ってません)。そんなこんなで搭乗案内があり、ようやく機内のシートに腰を下ろします。久しぶりのフライトに少々ビビりながらも、平然とした顔のまま機内誌など読みつつ、イヤホンのチャンネルを落語に合わせる。飛行機に乗るたびにこの落語を聴くのが楽しみなのです。以前アメリカに行ったときなどは13時間のフライトの間、ずっと友達3人と同じ落語を聞き続け、アメリカに到着したときには暗記していたほどです。あのときの粗忽長屋は今でも思い出し笑い出来るほどです。思い出し笑いて。しかし今回は1時間半のフライトなので、さすがに暗記するまでは至りませんでした。まぁ無理して暗記するようなものでもないのですけどね。

そんなこんなで無事に那覇空港に到着。迅速に動けるようにと手荷物は預けずに機内に持ち込んでいたのでダッシュで空港を出てレンタカー受け取りへ。レンタカー送迎バス乗り場にはアロハを着た「いかにも!」な沖縄ルックの案内人が。なんだ車はここで借りれるんじゃないのか。俺はてっきり空港の近くで車を借りてそのまま那覇市内へ昼飯食いに行こうと思っていたので、なんとなく出鼻を挫かれる。しかし営業所で純白に輝くロードスターを見てそんな挫かれた気分もどこへやら。ウキウキイソイソと乗り込みまずは那覇市内へLet's Drivin'!

ナビ付きなのはよいのですが、ナビの説明書がありません。まぁ、あっても読みませんが。試行錯誤しながらなんとか目的地を設定し、動き出します。カーラジオからはゴキゲンなOKINAWAN MUSIC。途中、何度も道に迷いながら(ナビ付いてるのにね)ようやく国際通りのサムズアンカーイン発見。鉄板焼きステーキを鱈腹食う。おおっとまだ初日の昼だぜ。まだまだ食わねばならぬモノがたくさんあるので腹八分目程度に抑えようと思っていたのに。でもきっと大丈夫。琉球料理は別腹だしね!(同じ腹です)

腹ごなしで国際通りをぶらぶらして、土産物屋を片っ端から冷やかして、いよいよ美ら海水族館へ向けて出発です。高速道路を走れば大体1時間半くらいだろうか。初めての車で高速道路だなんて、初体験で高級ソープに行くようなモノ。ちょっと違う。ううん、随分違う。免許とりたてで見知らぬ土地でレンタカーで深夜で土砂降りで高速道路に乗ってソープに行くのが正解だろう。いや、別に無理矢理風俗に例えなくともよいのだけれど。

高速を降りて水族館までは海岸沿いをドライブ。潮風を受けて快調に飛ばすロードスター。空は青く広がり、海は青く輝き、ドライブしながら恋を語るにはもってこいのシチュエーション。道も意外と空いています。というかすれ違う車がほとんど「わ」「れ」と、8割はレンタカー。沖縄本土の8割がレンタカーってことは沖縄の渋滞は観光客のせいってことですよね…。ホントすいません。

しかし水族館に向かう道はそれほど混んでいなくて、むしろ「この道であってんのかよ…?」と言わんばかりの閑散ぶり。そりゃそうだ、だって平日だもの。平日の昼間から水族館に向かう車なんてそうそういないっちゅうねん。水族館の少し手前の琉球蝶々園で水族館入場券を入手。せっかくだからってことで蝶々園も見て行こうと温室の中へ…なんじゃこりゃあっ!それほど広くはない温室に無数の蝶が飛び交っている。蝶が人に馴れるかどうかは知らないが、何故か赤い色へ群がる蝶。蝶ごときにこれほどの恐怖を感じたのは初めてですよ。ヒッチコックの「鳥」を髣髴とさせる光景でしたよ。いや、ヒッチコックの映画はこれっぽっちも見たことはないのですが。

蝶々園から恋人に運転を代わってもらって、しかもオープンにしていたのでかなり心地よく過ごしていました。できればもっと長距離を走りたかったなぁ。9月の陽射しなのでそれほど暑くもなく、厳しくもなく。紫外線だけには要注意だけれども。水族館の駐車場に車を停めると、そこはまさしくレンタカーワンダーランド。地元の車って3%くらいしか停まってませんでしたよ。旧消費税率ですよ。道に迷いながら水族館を発見。平日の昼間だというのに人が溢れかえってましたが、巨大ジンベイザメにちょーこーふーん。色とりどりの熱帯魚もいいけれど、やっぱでっかいサカナってのはなんか迫力あって、こんなのが海の中に人知れず泳いでいるのかと思うと地球の大きさに甚だ感服するわけでございますよ。人間ってちっぽけだなぁと思うわけですよ。ホテルに帰って風呂に入りながらマイジュニアを眺めながら「ホントちっぽけだなぁ…」なんて溜息ついたのは内緒です。

水族館を後にしてナゴパイナップルパークへ。うん、初日の観光の移動距離は無理がありすぎじゃないのか。ナビシートに座っていたのですが、俺ナビの役に立たないことこの上なく。EZナビ(アプリ)>デジタルナビ>俺ナビ。もうね、30分で着くところを1時間かかったからね。レンタカーのナビは最新の地図を入れていて欲しいと思います。あと、観光名所は十分に考えて回るべきだと思います。まぁ、そんな苦労の甲斐あってか、無事にナゴパイナップルパーク、略してNPPに着いたわけですが、見渡す限りパイナップル!ブラボー!ワンダホー!パイナポー!ってなもんです。パイナポー食い放題だったのでこれは食さねば!とムシャムシャモリモリとパイナポーを食っていたのですが、なんですか、パイナポーにはプロメリンだかプリンスメロンだか知りませんがタンパク質分解酵素がふんだんに含まれているわけですよ。もう食べ過ぎて口の中がヒリヒリ。食べ過ぎ注意とか書いてて欲しいっすよ。

口の中も程よく溶けたので、いざホテルへ。レンタカーだと知ってか知らずか煽ってくる馬鹿車をパツーンと突き放し、マツダ車をなめんな!ってよく見たらボンゴフレンディでしたよって話は置いといて、運転すること1時間、ようやく到着ホテル日航アリビラ。さとうきび畑に囲まれた海沿いのホテルでしたよ。パンフレットによると「スパニッシュな外観とカリビアンな内装」ってどないやねん!と心で軽くつっこみ。一晩お世話になるだけだから野暮なことは言いっこナシだ。

そんなこんなで沖縄の夜へ続く。[ 後編 ]

(2005.11.29)