20代最後の日

まさかこんな精神状態で今日のこの日を迎えるだなんて予想だにしてなかったよ。
ほんの一週間前までは。

10代最後の夏の日。
つまり19歳の8月31日。
僕は夕焼けに染まる一人の部屋で泣いた。
大声を出して泣いた。
なぜ泣いたのかは覚えていない。
ただ、10代という儚げで濃密な時間を失うことが怖かったのだろう。

10代とは不安定だ。
子ども扱いされると腹を立て、
大人扱いされると責任が邪魔だった。
ただ時間だけは濃密で
終わることなどないと思っていた。
友人たちとの馬鹿騒ぎ。
夜の闇に包まれて
この夜がずっと明けなければいいと思っていた。

いつからだろう、夜が怖くなったのは。
明かりのない部屋で眠ることが怖くなった。
傍に誰かの体温を感じなければ眠れなかった。
明かりを点けたままの部屋の中で
僕は身動ぎもせず朝日を待ち焦がれていた。
朝日が昇るのを待って僕は眠りに就いた。

それでも
いつからか一人で眠ることができた。
それは強くなったからではなく
弱い自分を認めたからだ。
弱い自分を認めることで
一人の夜を一人で過ごすことができるようになった。

そうして僕は20代を過ごしてきた。
その間、一人で眠ることもあったし
誰かが傍にいたこともあった。
幾人との夜を過ごし
そして28歳の初夏。
一生この人の横で眠ろうと決意した人に出会った。

幾夜過ごしただろう。
その人の横で眠ると安心できた。
左腕に伝わる体温と重さが僕を安心させた。
この安心が一生続くと思ってた。

「人生は運とタイミング」
本当にそうだと思う。
巡り逢わなければ一生出逢わない。
巡り逢うときは絶妙のタイミングで出逢ってしまう。
僕らは出逢うタイミングを間違えたのだ。
その間違いに気付かないまま最悪の時を迎えたんだ。

20代最後の今日。
決意を新たにした。
今まで出逢ってきた全ての人々
これから出逢う全ての人々に対して
僕は感謝を忘れないよう生きていくことを。
それが君に対するせめてもの償いだと。

僕は一生君を忘れないように忘れる。
君が僕の傍にいた事実だけは決して変えられることはないから。

ありがとう。
愛していた。