ニガくてせつない香り
久し振りにタバコを吸ってみた。何年ぶりだろう。タバコの買い方すら忘れてたよ。えっと…82番。そう、昔はソフトケースもあったけど今はハードボックスしかないみたいだね。一時期フィルターが白くなったことがあったけどまた茶色に戻ったんだ。
封を開けてフォルターを咥えると懐かしい香りがした。甘いような苦いような、あの頃の初めての大人の香り。火を着けずにこのままでもいいかな、なんて。机の奥で眠ってた100円ライターで火を着ける。ふわっと香る、青白く立ち上る煙。一口吸って、ふう、と息を吐く。口内が苦い。
君との最後のキスを思い出した。お互いに喫煙者だったから、煙草の香りもキスには邪魔にならなかった。吸っていたのも同じ銘柄。今でも君はまだ吸っているのかな。そんなことぼんやりと空に消えてく煙を追いながら考えてた。
(引用:宇多田ヒカル「First Love」)