俺の部屋にはピアノがある。嫁いだ妹が置いて行ったものだ。今ではそのピアノはオフクロの専用機である。いや、ピアノを「機」というのには語弊があるかもしれないが。
今日帰ってきたらそのピアノの上に楽譜があったので何となしに弾いてみる…おぉ、意外と弾ける。オフクロに弾かせてみる…俺と同じ程度のレベル。フハハハ、勝った。いや、オフクロに勝ってもしょうがないのだが。ついでに俺がギターを持ち出してきてオフクロのピアノに合わせて爪弾いてみる。おぉ、音楽一家みたいだ。なんだか休日にバイオリンを弾く少年の一家のようではないか。きっと少年の姉さんはフルートを吹くのであろう。我が一家もそうでありたいなぁとふと思う。俺のオヤジもトランペットでも吹けばよいのにと思ったが、彼は某国営専守防衛軍隊なので起床ラッパ程度しか無理であろう。いっそのこといかりや長介みたいにウッドベースでも担当させようか。
耳を澄ますと隣の部屋からオヤジのイビキが重低音で流れていた。彼もまた音楽一家ナリ。